現場の到達点と数値の実像
県は携帯トイレを中心に公的備蓄を進め、県と市町村の備蓄は最新の答弁で約二百万回分に達したと説明している。数は増えたが、これは発災直後の短期対応を想定した量である。
福祉避難所の整備は着実に進んだ。令和四年時点で三百三十五施設を公表した。一方で、国が示すスフィア基準を満たす指定避難所は現状で存在しないと県は認めている。数だけで安心は買えないのが現実だ。
議場でぶつかった核心:空調と非常電源
学校体育館の空調整備は議会で繰り返し追及された。議員は優先的な整備や国の起債活用を迫ったが、県は断熱性や巨大な改修費、電気代を理由に慎重姿勢を崩さなかった。結論は見えないまま、応急策としてスポットクーラーの配置が拡充された。
非常用電源も深刻だ。県の確保率が全国で下位にある現状を受け、発電機や蓄電池、EVの活用など多様な手段を示すものの、補助制度の選択や財政負担の不透明さが整備の足かせになっている。協定締結の進展も鈍い。
福祉避難所──制度は変わったが運用が追いつかない
災害対策基本法の改正で要配慮者の直接避難が可能となった。県はガイドラインやマニュアルを改訂し、個別避難計画の策定支援や研修で周知した。モデル事業も実施しているが、現場では施設確保や職員の確保が重い課題である。
段ボールベッドや個室用間仕切りを福祉避難スペースに転用する案も議論された。運用面では可能性を認めつつ、全避難所の機能を一律に上げるのは難しいと県は説明している。つまり“選ばれた避難所”の整備と運用が鍵だ。
配備・連携の現実と残る“見える化”の空白
トイレトレーラーやトイレカー、マンホールトイレといった長期対応の手段は検討段階だ。県は国の制度動向を注視しつつ、市町村への助言や事業者との連携を進める姿勢を示しているが、迅速な配備の仕組みはまだ整っていない。
避難所の受け入れ環境を地図で可視化する提案もあった。市民にとって分かりやすい情報は安心につながるが、設備が整った避難所への過度な集中を懸念する声もある。公開の範囲と方法は今後の議論課題である。