指定の急増と市民の不安
ここ数年、県が土砂災害の特別警戒区域指定に力を入れた結果、指定箇所が大きく増えた。行政の意図は危険を見える化し予防措置を促すことだ。だが指定は同時に「自宅周辺が危ない」との認識を広げた。
住民は避難や家の補強を急がねばならないと感じる。市町村は現地での合意形成に追われる。議会では、指定の説明不足やサポート体制の不備が追及された。県は市町村と密接に連携して対応すると説明した。
老朽化した砂防ダムと満砂のジレンマ
築後年数を経た砂防ダムが多く、長寿命化の必要性が高まっている。県は計画に基づき点検を続けると説明したが、改築や大規模な補修には時間と費用がかかる。現場の工期調整も難題だ。
一方で堆砂(満砂)状態の施設が下流の被害を防げるかどうかは住民の関心事である。県は点検で危険が増した箇所を抽出し、必要な撤去や補修を実施するとしている。しかし、満砂の一括集計は行っておらず、手戻りが生じやすい実情が残る。
優先順位を巡る予算の攻防
議会では「どこから手を付けるか」が繰り返し問われた。県は保全すべき住家が多い箇所や要配慮者施設、主要道路周辺を優先すると答弁した。だが対象は広い。限られた予算配分が常に足かせになる。
国の加速化対策なども活用し、県は補正や当初予算で事業費を確保してきたと説明した。ただ、現場からはもっと迅速な資金投入と制度的な優先枠が必要との声が上がっている。
デジタルで見える化、だが実効性は課題
県は三次元のデジタル地形図を防災に生かす整備を進める。来年度にデータ連携基盤を整え、施設や避難所などの情報を重ねて提供する考えだ。これにより危険箇所の把握と住民周知が進む期待がある。
ただしデジタル化は万能ではない。現地での合意形成や工事の技術的制約、資金の制約は別物である。見える化は意思決定を速める手段だ。最終的な効果は現場での実行力にかかっている。