現状:空の即応力と地上の脆弱さ
県議会での質疑は、災害時の搬送体制の「空」と「地上」を対照的に浮かび上がらせた。拠点病院側のヘリ受け入れ体制は整備が進んでいる。しかし一方で、診療所や地域医療拠点の耐震化は地域ごとに進み方が異なる。被災の起点が市町村レベルである現実を忘れてはならない。
DMATなどの即応チームの存在は救命の要だ。だが現場は病院へのアクセスや、現地での受け入れ能力に依存する。ヘリが着陸できても、地上の診療所が機能しなければ搬送先確保は難航する。即応力は空と地上が両輪であることを議論は再確認させた。
議場の論戦:追及と行政の回答
6月の定例会では、拠点病院のヘリポート整備状況が焦点となった。議員は敷地内整備の有無と不足への支援を問いただした。県は国の交付金を活用して敷地内整備を後押しする考えを示した。政治的な決断と財源確保がセットであることが明確になった。
11月の定例会では診療施設の耐震化が議題になった。議員は耐震化率を100パーセントにする目標設定を迫った。県は耐震化の重要性を認め、未完了の市町村に働きかけると表明したが、目標値の明示は避けた。ここに現場支援の具体策が問われる余地が残った。
現場が抱える具体的リスク
課題は見える化している。ヘリ着陸場所の確保、夜間や悪天候時の搬送ルート、病床や医療資材の即時確保。とくに小規模診療所は耐震化工事の財源が乏しい。自治体の財政力によって実効性に差が生じる恐れがある。
訓練や備蓄も重要だ。広域搬送訓練や備蓄医薬品の回転管理は現場負担が大きい。県が交付金で施設インフラを支援しても、運用や人材育成に手が回らなければ即応体制は脆弱なままだ。継続的な投資と現場への伴走が不可欠だ。
これから急ぐべき優先点
まず目の前の空白を埋めるため、敷地内ヘリ整備が遅れる拠点への優先的支援が必要だ。国の交付金を当てるだけでなく、自治体との調整を迅速化し、工程表を示すべきだ。時間の遅れは命の遅れになる。
同時に診療所の耐震化は財政支援と技術支援を組み合わせる形で進めるべきだ。県は100パーセント達成の明確な期限を提示していない。目標設定と中長期の資金計画を示すことで自治体の動きは変わる。