ここまでの歩みと現状
県は段階的にデジタル化を進めている。会議録の自動作成などAI・音声認識の実験も取り入れた。汎用の電子申請システムは市町村と共同で運用し、オンライン手続きの基盤を整えてきた。
導入は慎重だ。無線LANやタブレット整備と並行し、使われないシステムを作らない方針で段階的に移行している。押印の見直しや一部ファクス併用など、移行期の配慮も欠かさない。
一方で現場には未解消の課題がある。自治体ごとの業務方法の差や職員のICTリテラシーのばらつきが、効果の平準化を阻んでいる。議会では次期指針での明確化を求める声が強まった。
議会での主な攻防点
利用者目線の使いやすさが繰り返し問われた。スマホやアプリでの操作感、窓口での声の収集方法は十分とは言えないと指摘された。県は窓口での声を拾う努力を続けると答えたが、傾向分析はこれからだとしている。
テレワークの導入率は自治体内で低めに留まるとの指摘が出た。業務の性質で在宅が難しい職種がある現実を認めつつも、具体的な工程表や職種別の導入シナリオは示されていない。
人材確保も火種となった。市町村DXを支える人的支援を県がどこまで担うかが問われ、県は研修や協議会での支援を続ける一方、各地域拠点への専任配置は現時点で踏み切れていないと整理した。
現場で起きる実務の摩擦
収入証紙廃止や収納方法の多様化は利便性向上を目指す施策だが、最寄りで支払えない不便や納入通知書の発行遅延といった問題が議会で報告された。POSレジ拡充は費用対効果を理由に慎重な姿勢が示された。
市町村が単独で抱える事務は多い。県は共通化や代行での負担軽減を進めているが、業務様式の違いがネックだ。スケールメリットを生かすには標準化と伴走支援の両方が必要である。
これから求められる処方箋
県内DXの次段階では利用者の体験設計が鍵だ。スマホ対応やプッシュ通知、専用アプリの検討など、ユーザー接点の磨き込みが不可欠である。
自治体支援は量より質だ。共同利用の仕組みを深めると同時に、人材面では派遣や民間の伴走型支援を拡充し、現場で実装できる体制を整える必要がある。
未来の指針は目標と評価を明記すべきだ。テレワークの職種別目標やオンライン化の対象拡大、ユーザー満足度の定期的な検証を盛り込み、透明に進捗を示すことが求められる。