現状とこれまでの歩み

平成28年度の一斉点検で市は用水路や樋門など2,507か所を危険箇所として把握した。うち944か所を優先的に対処し、集中的な工事を図った。令和2年度末には1,904か所が対策済となり、残りは段階的に進める計画である。

設置した防護柵の延長は対策前と比較して加速した。平成23〜27年度の約17キロに対し、平成28〜令和2年度は約59キロを確保したと市は説明する。結果として転落件数は減少傾向を示したが、依然として事故は発生している。

議場で浮かんだ摩擦点 技術か住民のニーズか

議員からは二種類の切実な声が上がった。子どもの遊び場に接する公園ではボールを追って暗渠に入るリスクが指摘された。即時の柵設置や暗渠のふた設置を求める質問に対し、市長は公園整備と地域連携の重要性を強調したが、施工時期や技術的仕様の明示はなかった。

一方で農業用水路では浚渫作業の妨げになるとして農家が柵に反対する事例がある。柵があると泥上げ作業が難しくなる。市は地域事情を踏まえた調整を約束したが、取り付けと撤去を繰り返す運用や、可動式の設計といった実務的な解決案はまだ定着していない。

財源と業務委託の現実

地域の高齢化は浚渫や藻刈りなど日常の維持管理力を低下させる。議会の質問に対し市は交付金や多面的機能支払制度を活用して支援する現状を説明した。ただし、浚渫を恒常的に業者委託するための新規常設予算の確約はない。

技術面では夜間の視認性向上や巡回強化を求める声もある。LED照明や定期巡回、町内会との連携といったソフト施策は進めやすい一方、柵やふたの大規模整備は設置費用と維持費が課題だ。

市民に問われる優先順位と公開性

残る603か所の扱いは最大の焦点である。市は二年計画で順次実施するとしているが、優先順位の基準や公表スケジュールはあいまいだ。住民はどの場所がいつ直されるのかを知りたいはずだ。

公開された情報が乏しいと、地元の不安は解消しない。具体的な工程表と費用見込み、農家と調整した可動式柵の試行などを明示することが、現場と行政の信頼回復につながるだろう。