現場で露呈した“紙の病”と職員の疲弊
新型コロナ対応の特別定額給付金の扱いで、岡山市の実務が浮かび上がった。オンライン申請は想定より伸びず郵送処理が主流となった。
郵送処理の急増で日々の処理量が跳ね上がる場面があった。結果として窓口と内部事務の両方が逼迫した。市は給付対策室で対応を続けているが、順番待ちが生じた。
現場からは“簡単な手続きほど時間がかかる”という声が出る。押印や紙書類、縦割りシステムが足を引っ張った点が問題視された。
技術導入の歩みと局所的な成果
岡山市は段階的にAIとRPAの実証を進めてきた。健康データ解析や会議録支援といった実験がまず手掛けられた。
RPAは滞納整理や公用車管理などで導入され、年間で職員作業時間を削る成果が確認された。並行して庁内研修も行い適用業務の拡大を図った。
保育所入園選考ではシステム化で処理速度が改善した例もある。こうした“局所勝ち”の積み重ねをどう全庁展開するかが次の課題だ。
政治と費用の攻防が足かせに
コールセンター導入の是非は議論が続いた。議員側は休日対応を含めた“公共インフラ化”を主張した。
行政側は効果を認めつつも導入コストを重視した。機能と運用形態次第で期待効果は変わるとの立場だ。
リーダーシップのあり方も争点になった。市はデジタル担当部長を置き方針決定を進める意向を示したが、予算配分と優先順位は議会と詰める必要がある。
残された課題と市民への影響
デジタル化は便利さを増す一方で、使えない人の扱いが問題になる。高齢者やデジタル非接触層への配慮が欠かせない。
個人情報やAIの限界も忘れてはならない。実証結果をオープンにしつつ、誤りや偏りを検証する仕組みが必要だ。
最終的には“ハイブリッド”の運用が現実解になる。オンラインと窓口を併存させ、移行を急ぐと同時に公平性を守る設計が求められる。