小さな穴が生む大きな躊躇
感震ブレーカーも家具の転倒防止器具も、壁へのねじ止めが必要だ。入居者の多くは退去時の原状回復費を恐れる。賃貸での工事に一層慎重になる理由は明白である。
議会で明かされた実態は意外に柔軟だ。市営住宅ではねじ穴などの軽微な損傷について原則として退去時の原状回復を求めていない。だがこの運用が十分に知られていない。知られなければ行動は変わらない。
議場で交わされた問いと市の答え
令和元年11月定例会で議員は、ねじ穴を理由に設置が進まない現場の実情をただした。質問は入居者の不安を代弁する切実なものであった。
市は軽微な損傷について原状回復を事実上免除していると答えた。ここに実務上の解決策はある。だが口頭運用に留まることが、普及を妨げる別の障壁になっている点が見えてきた。
普及のために残る課題と処方箋
まず必要なのはルールの明文化である。口頭の運用を条例やガイドラインに落とし込み、誰がどの範囲で免除されるかを明らかにするべきだ。
次に周知と支援だ。高齢者優先の補助と家具転倒器具助成をセット化し、訪問や施工支援を組み合わせる。これで取り付けの心理的・実務的ハードルが下がる。