拡充の現状と財政の見通し

市は令和5年度に子ども医療費の拡充を盛り込んだ当初予算を編成した。拡充は子育て支援の主要策として優先されたためだ。

一方で追加の財源見通しは厳しい。市の想定では将来的に単年度で約10億円程度の増が見込まれる。十年で累積約100億円に達する可能性も指摘された。

市はその半分程度を地域福祉基金への積立で賄う考えを明らかにした。しかし物価高や税収の不確実性があり、基金だけで安定化できるとは断言していない。

行財政改革や事務事業の見直しを進め、持続可能な財政運営を前提に追加拡充の検討を進める方針だ。だが具体的な代替財源や継続的な財源メニューはまだ固まっていない。

議場で浮かんだ医療現場と受診増の懸念

拡充に伴い受診が増える懸念は繰り返し指摘された。小児科の混雑や待ち時間の長期化を懸念する医療側の声がある。

市は受診動向を把握し、医療機関と連携して状況を分析すると応じた。だが具体的な受診抑制策や医療側への財政支援は未定のままである。

無料化が『不要不急の受診』を誘発するリスクは検討会でも挙がっていた。制度の設計次第では過剰需要への対応が不可避であり、そのコストも議論の俎上にある。

現場負担と保護者負担のバランスをどう取るか。議会ではここが最大の摩擦点になっている。

所得制限撤廃の議論と『明石モデル』の射程

所得制限を設けない完全無償化を採る自治体モデルへの注目が高まっている。明石市の取り組みは議員側から何度も紹介された。

市は明石モデルを評価しつつも、導入には財源の裏付けが必要だと繰り返す。実務的な影響や長期的な財政負担を慎重に見極める姿勢だ。

制度の枠組みを国のナショナルミニマムの動向と照らし合わせる意見もある。市は国の設計や政令指定都市の連携を踏まえ、来年度予算で最終方針を示す考えを示した。

要するに所得制限撤廃は『理念として賛同するが実行は財政次第』というのが市の現時点の到達点である。

実務面の整備とデジタル化で負担軽減を狙う

事務負担の軽減や利便性向上に向け、マイナンバー活用で受給者証を医療機関で使えるようにする準備が進んでいる。

市はシステム改修を来年度に完了させる見込みだ。電子的な受給者証が普及すれば現場の事務コストは下がり、利用者の利便性は向上するはずだ。

だが電子化は医療機関の対応や周知が前提となる。市は医療機関との連携と保護者への丁寧な周知を約束しているが、運用開始までに課題が残る。

結局、財源と現場対応とデジタル化の三位一体でなければ、拡充の効果は限定的に終わる可能性が高い。