現状の“骨組み”――窓口と研修は整っている

市は生活圏域ごとに総合相談窓口を配置した。高齢者支援センターを拠点に介護予防や認知症サポーター養成を展開している。職員向けの研修で介護者支援や両立支援の対応力を高めている。

認知症カフェや介護者の集いも進めている。行方不明対策として安心おかえりシールやGPS購入助成の仕組みを導入した。権利擁護のために弁護士会らと連携するネットワークも構築済みである。

議会での論点と変遷――資金と意思表示のはざまで

議場では委託料の適正化と人員処遇が繰り返し問われた。市は令和2年度以降、段階的に人件費基準を上げ、最近は事務経費基準も引き上げたと説明した。だが具体的な数値目標や評価指標は示されていない。

認知症基本法成立後、当事者の声を行政に反映させる取組は始まった。本人ミーティングや車座意見交換会で意見を集め、パンフレットに反映した。しかし、市としての明確な“認知症基本計画”を今すぐ策定するという表明はないままである。

現場と住民の間の溝――周知と実効性の課題

安心おかえりシールは導入されたが、通行人が読み取って連絡する仕組みの理解が十分とは言えない。市は研修や体験会で読み取りを体験させるが、街中での利用に結びつけるための広報と実践機会がさらに必要だ。

認知症カフェの学区全設置は目標として語られるが、実行には人手と予算がいる。高齢者支援センターの業務は増えており、業務量に応じた委託料や人員配置の見直しを継続的に行う必要がある。

市民にとっての影響と残された問い

支援の“入口”は広がりつつある。だが、相談にたどり着けるかは住む地域で差が出る恐れがある。認知症カフェや当事者参加の機会が学区ごとに均等になるまで、格差は解消しない。

行政の言葉通りにサービスが届くかは、資金配分と現場の余力次第だ。市と市民が共に仕組みを使いこなす仕掛け作りが、次のステップである。